カラスが頭が良くて霊長類に負けていないとか、オランウータンやチンパンジーは目的のものを獲得するために道具を使うなど動物の知能に関する見聞が世間を騒がす。
実は、私にも彼らの能力について大声で言いたいことがひとつある。
猫の裏ワザというか秘技を知ってしまったのだ。
猫が前足を使って障子を開けて、外に出るという話はよく聞く。
それどころではないのだ、
今回はさすがの私も驚いた。
弟の一家が旅行で家を空けるということで飼い猫の大便処理と餌を与えることを頼まれた。
私の名前はまだない。「ネコ」と呼ばれている。
住まいはマンション五階にある。
入口を入ると玄関ホールから広い廊下が一直線に伸び、それに添って両側に各部屋がある。
そして突き当たりのドアの向こうに広々としたリビングルームがひかえる。
「ネコ」様には玄関を入ると直ぐ右手の一部屋が与えられている。
そこに二階建てのゲージが置かれ、その二階部分にフワフワ座布団が敷かれた「玉座」がある。「ネコ」はいつも王であるかのように横たわっているのだ。
いつもは、と言っても世話は今回で三回目(一回平均二泊三日)なのだが、私が猫部屋に入りゲージの鍵を外して出入口を開放する。
すると「ネコ」がおもむろに出てきて、スタスタと部屋の左隅に行く。
そして突然ハイジャンプし窓枠の横木に飛び上がる。
それから悠然と外を見はじめる。
そこはなかなかの眺望なのだ。
眼下には公園があり、大きな池には水鳥が遊んでいる。
猫とは言え、落ち着くのだ。
しばらく、眺め、猫の日常では異臭であろう私の匂いにもなれると、飛び降りるや馴れ馴れしく私に近づいてくる。
常に身体をほぐさなければと柔軟体操をする。
ハイ、ぐっと背中を伸ばして!
だが、この日は違っていた。
ゲージを開放すると一目散に廊下を走った。
そこで、家政婦はでなく、私はミタのだ。
見てしまった。
廊下の突き当たりはリビングルーム。
そこには閉ざされたドアがある。
そこへ突進したかと思うと、ジャンプしたのだ。
「エー、」と驚かされた。
ジャンプした先のターゲットはドアノブだった。
「ネコ」がノブに乗ったのだ。
重みでノブは下がった。
当然、ドアは開いた。
「ネコ」は当然の顔をして部屋に入った。
ノブとドアの開閉の因果関係を理解していたのか?
まさに猫の隠し技。
弟たちは前日の昼頃出かけた。
私が訪れた時、餌入れが空っぽだった。
落ち着かないのはそのせいだったのか。
空腹でイラついていたのだろうか。
それとも、猫の記憶力の限界で私を不法侵入者と見たのだろうか。
それで、先ずは逃げたのだろうか。
猫の秘技により入ることの出来たリビングルーム。「ネコ」は、そのままコーナーに行き窓枠にジャンプした。そしてカーテンの陰に隠れた。
しばらくは近づくと怒りを示すかのように「フーッ」と私を威嚇した。
仕方がないので、今度は私から「ネコ」を挑発してみた。
餌粒を窓枠に座っている猫の前に置いてみた。
十数分そのままにしておいた。
多分餌と認識したようだ。
「ネコ」が動こうとしないので置いた餌を払い除けてみた。
すると反応した。飛び降り、一目散にゲージに向かったのだ。
食べることに迷っていて、決意した頃裏切られたといった反応だった。
よくわからないのだが、自らゲージに入った。
入る前に反省の姿を見せてくれた。
反省!
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