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映画・世の動き

2021年11月14日 (日)

いや面白いもんだ ! ひょんなことで探し物に出っくわす。突然「スローなブギにしてくれ」が現れた。

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我が家の紅葉・黄葉 ①(タイタンビカス)

訪ね先に約束よりちょっと早めに着きそうだったので、時間調整で書店に入った。

そろそろ来年用のダイアリーを買ってもいいなと店内を回った。目に入ってきたのが角川文庫の棚だった。「そうだ」と思い著者別の陳列「か行」の段を探した。

なんと「片岡義男」があるではないか。しかも「スローなブギにしてくれ」だ。

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早速購入。奥付けをみたら、ごく最近の出版だった。初版は平成13年(2001年)と20年も前なのだが我が手に入った文庫は今年6月発行の第8版だった。絶版でなかったのだ。

数日後の話になるが、新聞を見ていた連れ合いが「12月に山崎豊子の『女系家族』が放送されるんだけど、監督が鶴橋康夫で以前『白い巨塔』を監督した人みたい。「巨塔」では岡田准一が主演したんだけど録画してなかったっけ?」と尋ねてきた。その記事では鶴橋監督は俳優達に高く評価されていた。それもあり、彼の監督作品を観たくなったようだ。

あちこちに収納されているDVD・BDを探した。1960年代に映画化された山崎作品の録画はいくつか見つかった。

「女系家族」(1961年大映制作、監督 三隅研次、出演 若尾文子、高田美和、京マチ子、田宮二郎等)も「白い巨塔」(1966年大映制作、監督 山本薩夫、出演 田宮二郎、東野英治郎、藤村志保等)もあった。

しかし、TVドラマ化された「白い巨塔」は見つからなかった。

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2016年5月録画「スローなブギにしてくれ」他

ところが、なんと「スローなブギにしてくれ」の録画BD が出てきたのだ。すっかり忘れていた。再生もされずに眠っていた。この日を待っていたのか。

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録画したのが2016年5月。5年も前だ。

映画が制作されたのは1981年4月。40年前。出演は浅野温子。彼女の初主演作だった。彼女が19歳の時だ。小悪魔として登場し、この後スターダムにのしあがっていく。

 先ずは小説を読んでみた。

文庫は短編集だった。表題は「スローなブギにしてくれ」だったけど、「スロー・・・」は61ページの短編で他に4本、「モンスター・ライド」「ハートブレイクなんて、へっちゃら」「マーマレードの朝」「さしむかいラブソング」が収まっていた。

「主人公」は「ゴロー」と「さち乃」、わきを固めるのはムスタングの男やスナックのマスターなどの人物そして「子猫達」だ。

ゴローは18歳で転校させられた高校生。理由は成績の悪さと素行の不良のため。さらに新しい高校でも気が向いたら学校へ行き、そうでない日はオートバイに乗ってぶらぶらして過ごしていた。乗るバイクはHONDA CB500。

さち乃は高校二年生の時に家出して、それ以来家に寄りついていない猫好きの女の子。

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映画「スローなブギにしてくれ」より

物語のスタートはゴローが第三京浜をバイクで走行中に前方を走っていたムスタングから猫とさち乃がほうりだされるところからだった。

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猫が中空を舞った

猫に振り回されながらも生活を一緒にするようになった(神奈川県大和市にて)が結局彼女の猫好きが高じたところで、ゴローが癇癪を起し猫もさち乃も捨てることになった。それもドライブ途中の静岡県三島市でだ。だが、最後にさち乃が戻り、働いていたバーのマスターがリクエストに応え聴かせてくれた曲が「スローなブギにしてくれ(I want you)」(作詞:松本隆、作曲、歌唱:南佳孝)だった。小説も映画もプロローグとエピローグはほとんど共通していた。

小説のほうは、自分とは違う生き様の若者達だと強く感じたが、まださわやかな印象を持った。

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さち乃はムスタングに乗せられ海岸まで来た(映画より)

映画はちょっと違った。ゴローも成人の男で、全体としてドロドロしたところが混じり、エピローグのさち乃が戻るところなどは似た展開だったがさらに続きがあった。山崎努演じる事業に失敗した中年男、ムスタングの男なのだが小説と違って深く絡んでいた。もう一人関わってきたのが室田日出男が演じたスナックのマスターだった。

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最後にムスタングは海に突っ込んだ!山崎演じるムスタングの男は生き延びたけど同乗していた女性は死んでしまった。

実は、映画の脚本では「スローなブギにしてくれ」に加え片岡作品から「ひどい雨が降ってきた」と「俺を起こして、さよならと言った」の二作品の内容を織り交ぜていたのだそうだ。

まあ、タイトルが同じでも小説・映画とそれぞれ違った印象を持った「スローなブギにしてくれ」だったが偶然が導いた作品との出会い。よかったよかった。

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我が家の紅葉 ②(もみじ)

 

2021年8月27日 (金)

70年たってもテンポよく、古さを感じさせない黒澤映画、「羅生門」

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大映映画「羅生門」冒頭より

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1950年作品であるにも関わらず、時代を感じさせるのはモノクロだというだけで、テンポも良いし皮肉も風刺も今でも通ずるものばかり。

とても面白かった映画「羅生門」。

映画の原作「藪の中」は芥川龍之介が1922年(大正11年)に発表した。

中国から帰ったばかりの芥川は健康を害し、懐疑的、厭世的な感を強めていたそうだが、時代は日清、日露、第一次世界大戦を経て軍部の台頭もあり、為政者と市民との間の気分は今と似たようなところもあったのかな?

今年8月21日の朝刊コラム「天声人語」は上記芥川の時代からおよそ20年ほど経ち軍部が実権を握ったころのこと。「吉沢久子」(生活評論家)さんの「東京大空襲の話」を引用しながら、「戦時中であるが『為政者への不信、不満は、すでにそれを通り越したのではないかと思われる』。首都爆撃を防げない指導者たちへの強い不信感である。76年前の現実をどうしてもコロナ禍と重ねてしまう」と書いてあった。

・・で、先ほどだけどびっくりしたよ!東京で若者向け接種会場を作ったものの、希望者殺到で抽選だって?(8/27 Yahooニュース)  感染者自宅待機と同じくらい驚いた。

時代ということで言えば20世紀に入って最初のパンデミック「スペインかぜ」(1918~1920)が収束して間もないしね。

この時三波まで襲われた日本でのスペインかぜ患者数は2300万人余り。死者38万8千人余だった。こんなことも余計に近く感じさせ、コロナ第五波の今に通ずるのかな。

芥川の世間をみる目はやはり見事だ。

もう100年も前のことになるのだけどな。

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金田一耕助が藪の中の真相を究明するのか?

 「藪の中」の面白さは紛う事なき確かな「事実」があるにもかかわらず、目撃者のみならず当事者の語ることもすべて違ったことだ。

事実は侍夫婦が旅の途上だったこと、多襄丸が二人と関わったこと、そして侍が死んだことだ。

検非違使が「お白洲」で証言やら罪状認否を求めるのだが、登場する7人《木樵り(きこり)、旅法師、放免、媼(おうな、年取った女性)、多襄丸、女(侍の妻)、巫女》が語ることが全て異なっていた。このちぐはぐさが、今にも通ずる面白さか。

ex 検非違使の庁:検非違使(けびいし)は犯罪者を検察、裁判し、京中の秩序の維持をつとめる役職。「庁」はその役所 、 放免(ほうめん):徒刑・流刑を免ぜられ、そのかわりに検非違使庁で使役される下級官吏、

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権力への風刺は多襄丸の検非違使への白状に見てとれる。

多襄丸曰く「私は殺すときに腰の太刀を使うのですが、あなた方は太刀は使わない、ただ権力で殺す。金で殺す。どうかすると、おためごかしの言葉だけでも殺すでしょう。」

今も変わらないな。芥川が執筆の当時は維新の薩長出身に胡座をかいた者が権力の座にいたけど、今じゃ世襲の坊っちゃん嬢ちゃんだからな。

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小説「羅生門」について言えば、映画でも「羅生門」と名の付いた門と小説にも登場した下人がいるものの小説のエピソード自体は描かれず下人も楼上に上る事もない。ただ楼上に死骸が何体も転がっていることを話す場面はあった。

羅生門は人が雨止みを待つ場だ。

激しく降る雨の中、雨露をしのぐために飛びこんできた下人に木樵りと旅法師が検非違使庁での訊問と見聞してきたことを話す。

ex.下人:身分の卑しい者

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映画「羅生門」より。(以下同じ)

二人は「わかんねえ、さっぱりわかんねえ、なにがなんだかわかんねえ」と繰り返すが、何が真実なのかわからないのか、人間の本性がわからないのか、初めのうちはよくわからない。

旅法師がふと洩らす。「恐ろしい話だ。今日と言う今日は人の心が信じられなくなりそうだ。盗賊よりも飢饉や火事や戦よりも恐ろしい」。どうも「わかんねえ」のは人の心のことか。

検非違使庁での訊問は木樵りや旅法師の目撃談から始まり当事者の罪状認否へと続く。

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ただ、映画らしく小説とは少し違う展開が二つあった。

一つは死体発見者の木樵りが検非違使庁で証言したことを二人の前ではひるがえし、「事件」を見たままに語り始めたことだ。役人の前では嘘をついていたわけだ。

証言者および当事者の語りは映画では進行に合わせて映像で再現されていくのだが、木樵りの「本当の話」を除いて多襄丸も武士もそれぞれ勇ましく戦い、武勇伝のように描かれ、そのように見え、聞こえた。

だが「本当」の話では実は武士も多襄丸も恐る恐る刀を構えビクビクしながら戦ったようだ。

もう一つは木樵りが羅生門に捨てられていた赤児を育てることにしたエピソードだ。

三人の薮中談義の途中で聞いた泣き声で真っ先に見つけた下人は赤児の纏っていた衣服を剥ぎ取り、我が物とした。木樵りは怒り下人は抵抗するのだが、そのやり取りはまさしく小説の中にあった死体が転がる楼上での老婆と下人の応酬そのものだった。

その点で映画シナリオは小説「藪の中」をストーリーの中核に据え、初めとおしまいを小説「羅生門」で締めた感じに見てとれた。

小説の中では老婆が死体から髪を抜き鬘にするのだと正当化しようとすることに下人は正義感から咎め止めようとした。これに老婆は「ワシのしていたことも悪い事とは思わぬぞよ。これとて、やはり、せねば餓死するじゃて、仕方なくすることじゃわい。その仕方ないことを良く知っていたこの女(髪を抜かれた遺体の女も生前詐欺紛いの事をしていた)は大方わしのする事も大目に見てくれるであろ。」と。これを聞いた下人は、それまで犯罪実行に躊躇していたのだが、ぱっとひらめき反転攻勢に出て老婆の衣類を奪い取った。映画ではこの犯罪正当化の理屈を赤子から衣類を穿いた下人に使わせた。老婆は死人から髪を抜いて餓えをしのごうとしたが、下人も食うためだった。また、咎めた木樵りも殺人現場から小刀をくすねていたのだった。

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映画「羅生門」では出演した俳優はわずか8人だった。三船は各証言ごとの再現ドラマで違った顔つきで登場する。八面六臂の演技だった。やんちゃだったり臆病であったりと多面の顔を見せ演じた。

いいなと感じさせてくれたのは羅生門で雨宿りしながら話し込む三人だった。

木樵りの志村喬(1982年没)、旅法師の千秋実(1999年没)そして下人の上田吉二郎(1972年没)だった。

 ご冥福を祈ります!

2021年4月 2日 (金)

これも韓流か、韓国大衆文化の今なのかな!映画「黒金星」面白かった!

二つのことについて思うところを並列して綴ってみる。

一つは「黒金星」のあれこれを画像(作品の中から)と共に、も一つは最近の「出来事」について思うことを。

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「黒金星」:「工作 黒金星と呼ばれた男」は1990年代の大韓民国(以下韓国)、朝鮮民主主義人員共和国(以下北朝鮮)、そして中華人民共和国(以下中国)の絡んだ物語。この映画は2020年12月11日にWOWOWで録画したものだけど、上映開始前に番宣があって板谷由夏、斉藤工、中井圭の三人が映画について語っていた。その中で中井さんは最大級の賛辞を贈った。

それは、この「黒金星」は「緊張感も作れるし、感動も生む映画。演出、脚本のお手本のような映画」だと。見終わって、それに近いものを感じた。

1988年にソウルオリンピックが開催されたが、驚くことに、その時点で韓国では地方議会議員選挙が実施されていなかった。1961年の軍事クーデター以来選挙はなく1991年になってようやく再開された。そして同年9月北朝鮮、韓国が国連に同時加盟した。

 

「出来事」:トランプさんは去ったのだけれど、置き土産をどのように処理するかでバイデンさんがご苦労なさっている。

トランピズムは「反グローバリズム、反リベラリズム、ナショナリズム、そして反エリート主義」を基調とし、「草の根の鬱積」を抱えた白人労働者などを結集してきたと言われている。(朝日米国総局長沢村氏)

この事は私など十分には認識できずにいたのだがアメリカの底知れぬ格差・貧富の差を反映したものだろうな。

一方「土産」が残した国際面の苦労を東アジアに絞ってみると、対中国及び対北朝鮮との軋轢、宥和問題がある。

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「黒金星」:韓国では1993年に金泳三が大統領に就任した。翌年北朝鮮では長く最高指導者であった金日成が死去している。このような状況の中で核問題が浮上する。北朝鮮の核拡散防止条約脱退で軍事的緊張が高まった。そこで登場するのが映画の主人公「黒金星」だ。韓国は北朝鮮の核開発の実態を探り、開発を阻止するため工作員を潜入させることを目論んだ。工作員として安全企画部(いわゆるKCIA の流れを汲むスパイ組織)に選ばれたのが韓国軍少佐の男・・黒金星だ。

 

「出来事」:先般行われた米中外交トップ会談でも深い対立が鮮明になり、北朝鮮のミサイルも飛んだのだけれど、誰しもが熱い戦争に至らぬことを望み 「口論で 済むなら どうぞ 好きなだけ」 (朝日川柳 3.24 広瀬一峰さん)と願わずにはいられない。

実際、米中双方とも熱い戦争は望んではいないだろう。実際に報道陣の眼前ではアメリカは中国の「強要」や「脅威」を非難し、中国は米国の「非礼」や「偽善」をあげつらったものの、非公開協議では冷静だったようだ。双方ともに自国向けに強硬さを演出する思惑があったとのこと。(朝日3/21社説)

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平壌空港にて

「黒金星」:敵地潜入、情報工作だと聞けば007並のアクションを思い描くが、この映画、暴力もカーチェイスもましてや銃撃戦など全くない。また、帝国陸軍中野学校出身者のような「切れ者」スパイも出てこない。実に泥臭いのだ。潜入スパイの実像はこうなのだろうな。

現実のスパイ戦は先ずは味方を欺くことから始まる。信用どころかプライドも失うような行為を繰り返す。友から借りた金を踏み倒し、酒浸りとギャンブルの放蕩生活を続け、ついには自己破産に陥る。いわば人生終わりのパターンだ。敵から見ても軍務を全うできずに除隊させられ社会的にも破綻した落ちこばれとしか見えない。内も外も欺いたところから工作者としての活動が始まり蠢いていく。先ずは北朝鮮からも韓国からも行き来ができる北京が舞台となった。

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上空からの平壌

「黒金星」:金日成の死後、1993年より国防委員会委員長だった息子の金正日が実質最高指導者の立場になった。黒金星の任務はこの金正日と単独で会える人物「対外経済委員会審議所長」と接点を作ることだった。この時中国では江沢民が指導者であった。改革開放が進み社会主義市場経済が成果を出し始めた頃だ。北朝鮮もこの機会を利用し公然非公然に外貨獲得を目指していた。(あくまでもシナリオがそうであるというだけで事実は知らない)

 

「出来事」:ところが、北朝鮮はここぞとばかりにミサイルを発射をしてきた。存在感を示そうとしただろうと言われているが、現実は国連制裁や自然災害で苦しみ、食糧不足も伝えられているという。さらにコロナ対策で経済の落ち込みは深刻のようだ。

ミサイルをどこかに打ち込んだとしても糊口をしのぐことにはならず、亡国自滅の結果しか招かないのは承知していることだろうけれど。

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「黒金星」:黒金星は数ヶ月の時間を費やしたものの工作対象の「所長」と接触できたばかりか昵懇の間柄になっていった。そして平壌で金正日と会えるまでになった。その間に、実際はどうなのだろうと思われることが描かれていた。

1995年となり金大中が再び政治の表舞台に出てきて新政治国民会議を結成し翌年の総選挙に総裁として臨んだ。だが落選した。その際の出来事がまさかと思うようなことだった。なんと敵対しているはずの韓国安全企画部と北朝鮮の対外関係の部署が接触し選挙情勢を変えるための謀略を考え、ミサイル発射という挑発行為実行を決めたのだ。そこでは莫大な謝礼が韓国側から渡され、結果として世論は政権側の狙い通りの反応をし金大中は落選した。

もう一つは、黒金星が北朝鮮の公安のようなものに疑われ、薬を飲まされ自白を迫られた。「公安」は朦朧とした「黒金星」に所属と上司を言えと迫るのだが、答えは見事だった。「上司? 事業家にとって上司はただ一人。スポンサー、金をくれる人」。事業家になりきっていて、拷問であろうが薬であろうが答えは先のとおりなのだ。結果疑いは晴れた。普段はお調子者の事業家のようにしか見えないのだが、その精神力に驚かされた。訓練でそこまで可能となるのだろうか?

 

「出来事」:それにしてもミヤンマー軍の国民弾圧はひどいな。3/30時点で死者が500人超えたと報じられた。

「北」もミヤンマーもそうだけれど、各国の歴史や国情を見なければ適切な対応はできない。異国にいる私たちは手をこまねくしかないのか。

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「黒金星」:黒金星は着実に成果を出しつつあった。ところが、1997年末大統領選挙が告示され、再び金大中が出馬することになった。与党ハンナラ党はなんとしても勝利をしなくてはと、執拗に金大中へのデマ宣伝を繰り返した。「北に通じている」「共産主義者だ」等など。また「安全企画部」は金大中が大統領に就任すると自分達に矛先が向かうと恐れた。そして有ろう事か、再び北と接触して金銭を用意し挑発行為を目論んだ。黒金星も偽装した事業が着実に成果を出しつつあったところで、ここで謀略が具体化すると場合によってはご破算となる恐れがあった。

結果、挑発行為決定寸前まで来たのだが、黒金星と所長による情報暴露で「安企部」と接触した「北」の担当部署が韓国からの金の一部を横領したことが公となり、挑発行動は取りやめとなった。

その結果僅差ではあったが、金大中が当選し、1998年2月25日第15代大統領に就任した。

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金大中の大統領当選を喜ぶ市民

「出来事」:ミヤンマーなどはイギリスに統治されていた植民地時代やら日本のインドシナ侵略時などの過酷な状況を経ながら、独立した後も多民族国家ゆえの複雑な事情から同国人同士が戦うようになるなど苦難の道をたどってきた。

最多人口のビルマ族からカレン族、カチン族、モン族などの民族の存在や何度かの軍事クーデターと流血が繰り返されてきた。数年前にはイスラム教徒ロヒンギャンの人々に対する残虐行為が報じられていた。彼らなど1982年には前軍事政権に国籍まで奪われている。私など弾圧の暴虐になんとかならないのか、各国はどうするのだとの思いを募らせるのだが、国軍は同国民同士の殺しあいが続いてきた歴史の中で我々には推し測れぬ感性と思考回路を持つのだろうか。それとも大日本帝国軍隊の「生きて虜囚の辱しめを受けず」のような戦陣訓でもあり同国民の射殺も厭わない何かがあるのだろうか?

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「黒金星」:その後黒金星も所長も時代に翻弄されながら生きた。核開発の阻止には至らなかった。映画では北朝鮮の平壌以外の所と思われる情景描写もされ、豪壮な招待所と対照的な庶民の生活もとらえられていた。

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そんなことで朝鮮半島の現実理解の一端になればと韓国映画「工作 黒金星と呼ばれた男」を観賞した。

北と南に分かれていても同じ民族。

微妙な関係を垣間見ることができ、これから半島に関わるニュースを見た時の捉え方が多少変化するかもしれないと感じた。

 

 

 

2020年9月25日 (金)

彼岸花とはよく名付けたものだ。きちっと咲いた。そして、樹木希林ラストムービーへ。

「お彼岸」とは春分の日、秋分の日をそれぞれ中日(なかび)とした前後七日間をさすようだ。

今日は彼岸最終日だ。

我が家の彼岸花もきちっと咲いた。

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先週始めぐらいから茎がスーと伸びてきた。彼岸に入り二日目頃に白花が開花した。

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そして今は紅白ともに満開だ。

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因んでと言う訳ではないけれど、お彼岸にふさわしいような映画を観た。

「命短し、恋せよ乙女」

ドイツ映画なのだが、日本人が起用されている。

大陸の東の果てのさらに海の向こうに横たわる不可思議な国・日本と見られているような映画だった。

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映画オープニングより(以下の写真も同じ)

樹木希林さんも出演している。

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GAGAのキャッチコピーによれば「樹木希林 遺作にして世界デビュー作」なのだ。

この映画製作は2018年4月にドイツで始まり、日本での撮影は7月6日から16日までの10日間だった。

そして希林さんはそれから2ヶ月後2018年9月15日に逝去された。 75歳だった。

彼女が満身創痍の状態ながらも俳優の活動をされていたことは聞いていた。

それにしても壮絶だ。

彼女の役回りはドイツで主人公とともに「行動していた」日本人女性の祖母であった。

孫である日本人女性を演じたのは入月絢さんだ。

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彼女は、結局は主人公であるドイツ人の「妄想」「幻覚」として出現するのだが疾うに亡くなっておりこの世には存在しないはずなのだ。

いや亡霊なのかもしれない? あたかも彼岸此岸を往き来しているかのようだが、いずれにしても死者との対話が進む。

映画の中では、時に、明らかに幻覚だと理解できる筋運びでありながら、突然夢うつつ時の心象風景であったり、そして亡霊が突然出現する。

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それはともかく、入月さんのことを少し調べて驚いた。

奇遇が起きていた

実は、私は彼女本人をすぐそばで見ていたのだ。

以前 ”喜多郎” の Japan Tour に行ったことを記したことがあった。

その際シンセサイザーの調べに合わせて踊る女性がいた。しかも能面をかぶって。

でも、ポスターにもチケットにもそのダンサーの名前は出ていなかった。

改めて彼女の経歴を見て驚いた。入月絢さんはプロのダンサーだった。

東京芸大を卒業し、ドイツ人と結婚もし、主として海外で活躍されているようだ。

そして、喜多郎さんとはツアーのソロダンサーとして何度も共演されてきたようだ。

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マレーシアでの舞(Kitaro-Mars : Live  in Malaysia より)

この能面と舞は私が見たライブでも全く同じものが披露された。

そして、この映画「命短し恋せよ乙女」の中でも、何度も能面が出てきた。

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このタイトルの文言「命短し・・・・」は楽曲「ゴンドラの唄」の歌詞の冒頭にある。

作曲中山晋平、作詞吉井勇。

映画の中でこの歌を口ずさむのが入月絢さんと樹木希林さんだ。

入月さんがブランコに乗りながら歌う場面があったが、調べたところ黒澤明監督作品「生きる」の中で、志村喬さんが同じようにブランコに揺られながらこの歌を歌っていたそうだ。「生きる」は我がライブラリにある。確かめてみよう!

ドイツ人のドーリス・デリエ監督はかなりの日本通のようだ。とりわけ日本映画に関しては思い入れが深いように見える。

日本映画に心酔しているのではという証は実はもうひとつある。

フィナーレは日本の茅ヶ崎が舞台となるのだが、そのメインが小津安二郎に関わるところなのだ。

小津が脚本などの執筆に利用していた旅館・茅ヶ崎館が使われた。近場には松竹大船撮影所もあった。

樹木希林はこの茅ヶ崎館女将として登場した。女将といっても既に廃業同然の旅館に住む住人としてだ。

🎶

映画そのものについては、冒頭のタイトルや出演者紹介字幕の背景に流れる浮世絵的妖怪画に先ずは引き込まれて行ったが、主人公の酒癖により離婚となった元妻や娘との関わり、本人の兄弟や親との軋轢、その原因に兄の極右ネオナチへの入党などドイツの現状が見えたり、などなどが重なりアルコールによる病状が更に悪化し、死者との対話などの幻覚が常態の日々となっていくように見えた。ただこうやって思い出しながら綴っていると改めて感じるものもあった。

まあ、樹木さんの最後の演技を見ることができて、そして入月さんについて新たに知ったことなども良かったな。

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2020年5月30日 (土)

パンデミック映画「復活の日」の録画があるはずだと探していた!あったのだ!

2月中旬ぐらいから、パンデミックという言葉が聞こえていた。そして想起したのが以前録画してあったはずの映画「復活の日」だった。

探したが見つからない。

三年前に我が家の耐震補強改築工事の際、あれこれの荷物をダンボールやらに詰め込み、弟のマンションなど、あちこちに分散した。

その中に録画されたディスクもあったはずだった。根気よく探した。そして、ついに見つけたのだ。物置にしまってあったディスクケースの中から出てきた。2012年5月に録画したものだった。8年も前だった。

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今年も実った。我が家の桜桃の実。

今、角川映画「復活の日」が、他のパンデミック物と併せて注目されているようだ。

どこかの映画館で再上映されているとも聞いた。

映画を見てから改めて分かったのだが深作欣二監督の作品だった。深作監督といえば「仁義なき戦い」で有名だ。ただし、恥ずかしながら私はヤクザ抗争の実録ものはあまり好きでないので見ていない。「復活の日」映画化は1980年。物語の時代背景は1982年。公開当時の近未来だ。

そして原作は小松左京さんだ。驚くことに1964年に発表されている。凄い想像及び創造力。SF小説は好きだったので小松さんの作品は「日本沈没」他、何冊か読んだ。

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映画オープニングタイトルの副題が「ウイルス」と先見性は見事。

物語はトランプさん名付けの武漢ウイルスとは違うが研究途上の「細菌ウイルス兵器」争奪戦による漏れと増殖だった。

このウイルスの特徴は気温により増殖率と毒性が変化するというもので零下10度前後から増殖が始まり、摂氏5度以上で毒性を持ち始めるのだった。結果として、全世界に蔓延してしまい人類は滅亡寸前までに至った。現実と不思議な関連だけれど、この映画でもイタリアで最初に大きく感染が広がり、映画上で当初「イタリア風邪」と呼ばれた。

しかし、南極にはウイルスは到達しなかった。そのため南極の基地にいた各国の隊員は無事だった。

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映画「復活の日」より

そして、今回の現実のコロナ禍ではクルーズ船や米国海軍の艦船で感染者が多発したのだが、映画では浮上することなく潜航していた原子力潜水艦の乗組員は無事だった。

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映画「復活の日」より

南極で生き残った人々が人類の再興についてともに歩むことを決意したのだが、北米に地震の兆候が表れた。

地震だけで済むのであれば、もはや無人となったところが破壊されるだけで終わりだ。

しかし、何処にも軍の論理だけで動く者がいて、人であるとか地球上に生息するあれこれには思いがいたらぬままに軍事を優先させてしまう。

その米国軍人は感染死する前にミサイルの「全自動報復装置」を起動させてしまった。

地震の揺れが核攻撃と同レベルの場合は自動反応しミサイルを発射してしまうのだ。

1980年当時は冷戦の只中で、アメリカの標的はソビエト連邦だ。

一方ソ連の防衛システムは敵ミサイル着弾と同時に報復ミサイルが自動発射される仕組みだ。

南極に残ったメンバーが起爆装置を解除しようとワシントンに向かったのだが間に合わなかった。

世界中の都市が核で破壊された。そして南極の基地も軍事基地とみなされていて報復ミサイルが炸裂した。

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庭を彩り始めた紫陽花の花々

草刈正雄さんの演じる主人公はワシントンに向かった一人だった。

システム解除に失敗したものの生き延びた。

そして南に向かった。

南米には座礁していた砕氷船に乗りミサイルから避難した人々がいるはずだった。

草刈はボロボロになりながら南に向かい、ついに再会することができた。

めでたしめでたし!

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ガクアジサイも多彩なのだ!

この映画を観て、三回「さすが!」と思った。

第一は深作欣二監督だ。

ちょうど40年前の作品なのだが、筋立てやロケーションなど現在の映画とも遜色のないものを作り上げているなと思った。

どうしても冗長であったりマンネリ的などこかで見たような展開になりがちだが、この映画はそうではなかった。

ただ、ところどころでサービス精神旺盛なのか、何故ここなのという場面があったことも確か。

たとえば、草刈がワシントンから南米をめざして何万キロも歩くのだけれど、途中マチュ・ピチュが出てきた。

飢えに苦しみながら歩く人がペルーの海岸線からわざわざ標高2500メートルの高地に登るかー?という愛嬌もあったけれどね。

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「復活の日」より

さすがの第二は角川春樹さん。

角川さんはこの映画に24億円とも32億円とも言われる大金(1980年当時)をつぎ込んだ。結果、南極なども含めロケ場所に躊躇することもなく、またキャスティングもすごかった。ハリウッドの俳優陣が出演していた。ジョージ・ケネディ、チャック・コナーズ、ロバート・ボーンそしてオリヴィア・ハッセー。日本からは夏木勲、千葉真一、渡瀬恒彦、緒形拳そして草刈正雄だ。昨年秋に遅まきながら朝ドラ「なつぞら」を視聴したのだが、その時の草刈の演じたおじいさんぶりに感心したばかりだったので画面上の若者・草刈と比べてしまった。

また、草刈は185センチメートルもの上背があるのだが、自動発射装置解除に共に向かったカーター少佐ことボー・スヴェンソンはさらに一回り大きい193センチメートルで、南極の基地で争う二人がまるで大人と子供のように見えた。

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ガクアジサイも多彩だ

さすがの最後は、やはり小松左京さん。SF作家という枠に収まらない多彩な活動をされた方だったようだ。

「復活の日」の後に「日本沈没」などが出版されたのだが、映画ではで草刈が地震予知学者を演じ、執筆時にそのキャラクターを作るにあたって地震などを深く学び、それが「日本沈没」の発想につながったらしい。

まさかのパンデミックの渦中にあって、改めてその凄さが分かった!

あと、何かと偶然が多い今日このごろであるが、録画を見終わった翌日の朝刊(5月26日付朝日新聞朝刊)に「南極越冬隊員が病気緊急帰国」という見出しが目に入った。病気になったのは日本・昭和基地の隊員で、たまたまロシアの基地沖に停泊していたロシア船に支援を求めたところ応じてくれケープタウンまで搬送されたそうだ。映画の中ではロシア(ソ連)の潜水艦が登場し、艦内で病人が発生していたのだが助けることができなかった。でもアメリカもソ連も、日本も協力して未来に向かった。

ウイルスの制御そして核の廃絶、やり遂げなければいけない大きな課題だ。

 

2020年1月24日 (金)

イラン映画を観た。イランの人々は私たちと全く同じ感性を持っていた。人々は国に翻弄されている。イランでもアメリカでも!?

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白梅も咲いた

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紅梅もまだ真っ盛り!我が家の梅の木。

まあ、イラン、アメリカに限らず私たちも翻弄されているけれどね!

常々、周辺国との関係で、その国への思いや捉え方が、結局、時の政府の考えが主導していることにがっかりしてしまう。

さんざ嫌韓を煽ってきた安倍首相が「韓国は最も重要な隣国」などと言い始めた。(FNNprime 1/20)

1月20日通常国会が召集されて披露された安倍首相の施政方針演説での発言だ。

結局、自己が熟考しての結論でなく米日グローバル資本に忖度しているだけかな。

安倍さんは誰よりも長く首相の座におり、憲法改悪にこだわっているようだけれど、こだわりの中身はともかくとして、結局後世には最長最悪の長期政権だったとされるみたいな感じ。(傍目八目的感想?!)

嫌韓とは違うけれど、三菱電機へのサイバー攻撃を中国系のハッカー集団が関与したかという記事が大きく出ていた(1/22朝日新聞朝刊一面)

嫌中情報?

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イラン映画「ダマスカス」より・・・破壊される都市

さらに面白いことは(などというと不謹慎だと怒られそうだけれど)その後、三菱と中国が連続でマスコミに登場してきたことだ。

三菱で言えばドイツ検察当局が排ガス不正疑惑を理由に三菱自動車のドイツ拠点を捜査したのだ。

更に三菱重工の造船所がなくなるのかという嘆きの投稿をヤフーか何かで見た。気になり調べると2019年12月12日付け日本経済新聞電子版に長崎の造船所の一つが上位の造船会社に譲られるとあった。

そして三菱は軍艦に特化した造船を進めるとの記事があった。

でも、以前、安倍ちゃんが後押ししていたオーストラリア軍向け潜水艦の受注に際してフランスの造船会社に敗北しているのだよね。

三菱はまだあった。国産初のジェット旅客機「スペースジェット」を開発する三菱航空機が6度目の納入延期の方針を固めたようだ。

三菱に何が起きているのだろうか?

よく分からないけれど魑魅魍魎が跋扈する世界だ。

中国で言えば肺炎(コロナウイルス)だ。

これも大変なことだ。貿易をめぐりアメリカと対立し、前年比より貿易収支が悪くなったと報道されていたが、これでさらに落ち込むかも知れないし、中国は嫌いだなどという人も増えるかも知れない。

残念なことだ。(1月24日付の外務省の危険情報で武漢のみならず湖北省全体がレベル3の危険地帯にされた)

そんなあれこれが錯綜する中でイランとアメリカのゴタゴタが起きた。

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破壊される古代遺跡(映画「ダマスカス」より)

アメリカのドローン攻撃やら、イランの民間機撃墜だ。

ここで、なぜイランに着目するかといえば、第三次世界大戦を是が非でも回避したいという思いもあるけれど、実は私と妻がまもなくアフリカ北部に渡航予定なのだ。

しかも、アフリカ北部カイロまでの直行便はイランの上空を通過するというではないか。

旅行社もその点を危惧していたようで、ギリギリまで催行可能の連絡がなかった。

数日前にようやく連絡があった。

「出発します」だった。でも、カイロ及びナイル川周辺といえども安全地帯でなくリスク1であり、ちょっと離れるとリスク3なのだ。

それはともかく、日本のマスコミを通して知る限りではイラン、イスラムシーア派も盲信集団としてしか紹介されない。

そこで、目的地ではないけれど通過点であるイランに興味を持った。

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イラクで政府軍兵士を殺害しようとするISらしき武装集団と戦意高揚を叫ぶ少年。

我が家の映画ライブラリーを探した。あった。二本のイラン映画が録画されていた。

一本は「人生タクシー」(2015年ジャファル・パナヒ監督 65回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品)ともう一本は「ダマスカス」(2018年イブラヒム・ハタミキア監督作品)だ。

二つの映画を観た。先ずは、感想を言えば、日本のマスコミを通して知らされるイスラム国家内の人々に対する印象と全く違ったということだ。「アッツラー」は再々登場するが日常生活やら日頃の所作感性を見ていると我が日本の人々と何も変わらないのだ。映画はそれなりに感動ものだった。

決して狂信集団とその国家ではないのだ。

そんなことで鬼畜米英やら鬼畜○○には決して踊らされないぞと思った。鬼畜アメリカにべったりの安倍ちゃんの真似もしないぞ!

 

2019年8月 9日 (金)

覇者にならんとするならヤジ排除でなくてアジ(アジテーション)で勝負しよう!

韓国映画を見た。

イ・ビョンホン主演の「天命の城」だ。

面白いというより感心した。

イ・ビョンホンが登場するからには彼が英雄的活躍をするスペクタクルだろうなと思い視始めた。

ところが、活劇はあったものの、彼は地味な忠臣を演じ、その忠臣は死を賭しても戦争を回避することを使命としていた。

彼の新しい面を見たようだ。

映画自体についても、個々のセリフや役回りは創作であるのだけど、朝鮮が清に屈服したという一面屈辱的なことを、しっかり史実に沿って描き感心したのだ。

表題の「ヤジ、アジ」はこの映画そのものからでなく、朝鮮と清の歴史的一断片に接し、明、清、朝鮮の関係がどう変遷したのかに興味が湧き、周辺事情を探ってみたことからでた。

そこで登場したのが李自成であり、その彼がとった戦略・・・とはいっても本人は自覚していなかったかもしれぬが・・・勢力拡大の過程や農民大衆に向け発した言葉・スローガンに感心させられたことや、最近の選挙での出来事が重なり思いついたのが「ヤジ・アジ」だ。やはり、覇者となろうとしたら民衆の心をつかみ支持を得られなければね!今話題の山本太郎さんのご奮闘にも少し重なるのかな。

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「天命の城」導入部の時代説明

「天命の城」にもどる。

ときは1636年。満州にあった女真族の国である後金でホンタイジ(第二代)が即位し国号を大清と改めた年だ。

この時点では未だ中国全体は「明」の支配下にあった。

その20年前の1616年、女真の汗(ハン)であるヌルハチ(始祖・第一代)は全女真族の統一を実現し国号をアイシン国(後金)とした。

1619年にはサルフの戦いで明を破り遼東半島まで進出し、1627年には朝鮮に攻め入り制圧した後、後金を「兄」、朝鮮を「弟」とする和議を結んでいる。

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清の弓部隊・・・「天命の城」より

しかし、そんな和議を結びながらも朝鮮は宗主国である明に対して朝貢国であり続け、ホンタイジの求める清への臣従を拒み続けた。そこで業を煮やした清が攻め入ったのが1636年12月であり、映画の舞台・時でもある。(丙子の乱)

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大口径の大砲を操る清の砲兵部隊・・・・「天命の城」より

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400年も前にこんな装備で攻め込まれたらとても立ち向かえない。

朝鮮は降伏した。

ここでの判断、臣従にかかわって明朝から清朝にに変えることでの早目の選択が結局のところ朝鮮王朝を延命させたのかな?

この乱の時に李氏朝鮮を統治していたのは16代王仁祖(インジョ)だった。韓流ドラマで言えば、「馬医」の時代(このドラマも面白かった。現在もBSで放映中)。

李氏朝鮮は丙子の乱の後、清との冊封関係に入り1894年の日清戦争で清が敗北するまで続いた。

朝鮮王朝そのものは最後に国名を変える(大韓帝国)などもしたが1910年の日韓併合により27代純宗を最後の王(皇帝)に戴きながら終わった。

ヤジでなくアジとは?

朝鮮史を整理していたら長くなってしまった。(でも、なんとなく頭も整理された)

表題のことについて少し書こう。先にも少し触れたのだが李自成が登場するのだ。

彼は言わばヤクザの親分のような人だった。(NHK・BS 「中国王朝 英雄たちの伝説」の中での浅田次郎さんのコメント)

そんな彼がなぜ人々の支持を得て、反乱軍のトップになったのか、これについては同じ番組の中で筑波大学元教授の佐藤文俊さんが明快に答えている。端的に言ってスローガンの分かりやすさと魅力だったと言われた。

当時の中国は王侯貴族と宦官による政治腐敗が深刻な状況に有り、人びとは貧富の差と重税に喘いでいた。それに加え災害と飢饉により飢え死にする人が相次いだ。にも関わらず、明朝は東北地方における清との戦いで戦費を多く必要として、農民に田畑の収穫量を上回る税を求めてきた。こうなると飢え死にするか盗賊になるしかない。各地の反乱は当然のことく頻発した。

その反乱のなかで頭角を現したのが李自成だった。

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NHK・BS「反逆者北京占領 李自成の乱からドルゴンへ」より

 

李自成のもとには土地を奪われ流民となった農民たちが結集した。

それは李自成の掲げたスローガンとアジ演説?に惹かれたのだ。

一つは「均田免賦」・・・身分にかかわらず農地を均等に分け、一定期間は税も免除する。

二つは「追賍助餉」・・・大地主の財産を没収し、反乱軍の資金にあてる。

これらを掲げ進軍し1644年には40万の大軍を率いて北京に攻め入り明朝を滅亡させた。

しかし、反乱軍は政治も戦もプロではなかった。そのため摂政ドルゴン(ホンタイジは前年死去)の清軍や明の残党の連合部隊との戦闘であっけなく破れ、李自成も逃亡途中で殺された。ここから清の中国統治が始まった。

ところで山本太郎さん率いる「れいわ新選組」のスローガンと街頭でのアジテーションは、やはりわかりやすい。緊急政策一覧の一番に出ていたのが●消費税は廃止、下に続いていたのが●奨学金チャラ●全国一律最低賃金1500円●災害に備える●原発即時禁止・被爆させない、等など。

頑張ってください!