彼岸花とはよく名付けたものだ。きちっと咲いた。そして、樹木希林ラストムービーへ。
「お彼岸」とは春分の日、秋分の日をそれぞれ中日(なかび)とした前後七日間をさすようだ。
今日は彼岸最終日だ。
我が家の彼岸花もきちっと咲いた。
先週始めぐらいから茎がスーと伸びてきた。彼岸に入り二日目頃に白花が開花した。
そして今は紅白ともに満開だ。
因んでと言う訳ではないけれど、お彼岸にふさわしいような映画を観た。
「命短し、恋せよ乙女」
ドイツ映画なのだが、日本人が起用されている。
大陸の東の果てのさらに海の向こうに横たわる不可思議な国・日本と見られているような映画だった。
映画オープニングより(以下の写真も同じ)
樹木希林さんも出演している。
GAGAのキャッチコピーによれば「樹木希林 遺作にして世界デビュー作」なのだ。
この映画製作は2018年4月にドイツで始まり、日本での撮影は7月6日から16日までの10日間だった。
そして希林さんはそれから2ヶ月後2018年9月15日に逝去された。 75歳だった。
彼女が満身創痍の状態ながらも俳優の活動をされていたことは聞いていた。
それにしても壮絶だ。
彼女の役回りはドイツで主人公とともに「行動していた」日本人女性の祖母であった。
孫である日本人女性を演じたのは入月絢さんだ。
彼女は、結局は主人公であるドイツ人の「妄想」「幻覚」として出現するのだが疾うに亡くなっておりこの世には存在しないはずなのだ。
いや亡霊なのかもしれない? あたかも彼岸此岸を往き来しているかのようだが、いずれにしても死者との対話が進む。
映画の中では、時に、明らかに幻覚だと理解できる筋運びでありながら、突然夢うつつ時の心象風景であったり、そして亡霊が突然出現する。
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それはともかく、入月さんのことを少し調べて驚いた。
奇遇が起きていた❗
実は、私は彼女本人をすぐそばで見ていたのだ。
以前 ”喜多郎” の Japan Tour に行ったことを記したことがあった。
その際シンセサイザーの調べに合わせて踊る女性がいた。しかも能面をかぶって。
でも、ポスターにもチケットにもそのダンサーの名前は出ていなかった。
改めて彼女の経歴を見て驚いた。入月絢さんはプロのダンサーだった。
東京芸大を卒業し、ドイツ人と結婚もし、主として海外で活躍されているようだ。
そして、喜多郎さんとはツアーのソロダンサーとして何度も共演されてきたようだ。
マレーシアでの舞(Kitaro-Mars : Live in Malaysia より)
この能面と舞は私が見たライブでも全く同じものが披露された。
そして、この映画「命短し恋せよ乙女」の中でも、何度も能面が出てきた。
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このタイトルの文言「命短し・・・・」は楽曲「ゴンドラの唄」の歌詞の冒頭にある。
作曲中山晋平、作詞吉井勇。
映画の中でこの歌を口ずさむのが入月絢さんと樹木希林さんだ。
入月さんがブランコに乗りながら歌う場面があったが、調べたところ黒澤明監督作品「生きる」の中で、志村喬さんが同じようにブランコに揺られながらこの歌を歌っていたそうだ。「生きる」は我がライブラリにある。確かめてみよう!
ドイツ人のドーリス・デリエ監督はかなりの日本通のようだ。とりわけ日本映画に関しては思い入れが深いように見える。
日本映画に心酔しているのではという証は実はもうひとつある。
フィナーレは日本の茅ヶ崎が舞台となるのだが、そのメインが小津安二郎に関わるところなのだ。
小津が脚本などの執筆に利用していた旅館・茅ヶ崎館が使われた。近場には松竹大船撮影所もあった。
樹木希林はこの茅ヶ崎館女将として登場した。女将といっても既に廃業同然の旅館に住む住人としてだ。
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映画そのものについては、冒頭のタイトルや出演者紹介字幕の背景に流れる浮世絵的妖怪画に先ずは引き込まれて行ったが、主人公の酒癖により離婚となった元妻や娘との関わり、本人の兄弟や親との軋轢、その原因に兄の極右ネオナチへの入党などドイツの現状が見えたり、などなどが重なりアルコールによる病状が更に悪化し、死者との対話などの幻覚が常態の日々となっていくように見えた。ただこうやって思い出しながら綴っていると改めて感じるものもあった。
まあ、樹木さんの最後の演技を見ることができて、そして入月さんについて新たに知ったことなども良かったな。
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