仲代さんの訃報は朝日新聞の11月12日の朝刊トップと社会面で大きく報じられ、翌日も一面トップのコラム「天声人語」で取り上げられた。
12日のトップ面では、俳優座から始まった演劇活動で、それほど時を経ずに大型新人と評されたことや、映画では小林正樹監督の「人間の條件」で注目を集め、黒澤監督作品では三船敏郎さんの敵役を見事に演じ、スターの座を射止めた。1980年には「影武者」でカンヌ国際映画祭の最高賞に輝いた等が紹介されていた。
また、「無名塾」を立ち上げ、若い俳優の育成に務めたことや、合宿地として通った能登半島では、その縁もあり復興に尽力したことなどが大掴みに紹介された。
社会面では「評伝」とくくり、「銀幕と舞台 貫いた愛」「仲代さん 唯一無二の重厚感」との見出しで舞台や映画で見せる姿とは別の「スター然としたところの無いところや、会話の端々からユーモアが自然にこぼれだす」人間性を紹介していた。
13日のコラム「天声人語」で「仲代達矢さん逝く」と題されて紹介されていた映画は「椿三十郎」と「人間の條件」。

椿三十郎のラストの場面で三船と仲代の決闘シーンがある。
このシーンの為、仲代は居合の稽古を重ねていたそうだ。
殺陣のシーンは映像をご覧いただくしかないと、断りながら、「一瞬刀がきらめくと、仲代さんの胸から噴水のごとく血のりがほとばしる。本当に切られてしまったと思ったスタッフがいた」と紹介した。
黒澤は撮影に際して真剣を帯びさせたという話もあり、撮影中に自分の手を切った者がいたという。
そうであれば、「本当に切られた」と思っちゃうよね。
ここまで、読んで是非とも観てみたいと思った。
幸い、三船作品は溜め録してある。「椿三十郎」を観た。2020年1月に録画しておきながら、観ていなかった。
これまで時代劇もたくさん見てきたけど、これほどすごいシーンは初めてだ。
コラムも「日本の映画史上、屈指の決闘場面である」と称えていた。
決闘シーンに限らず、全体としてテンポよく、セリフの言い回しもよかった。63年前の映画と思えないほど。さすが黒澤明とあらためて感じ入った。
ストーリーは藩内の汚職に怒った若い侍9人が悪の次席家老などを告発しようとし、それに力を貸すのが椿三十郎。そして最後に正義が勝つというものだけどね。なんと、その9人の中に青大将と若大将がいたのだ。ビックリ。
若い加山雄三と田中邦衛だ。加山24歳、田中29歳。
朝日新聞では、本日11月20日にも「仲代達矢さんを悼む」というタイトルで映画評論家秦早穗子さんの寄稿を掲載していた。彼女は仲代の妻、恭子さんの女学校時代からの友達だ。私的な事も絡めて様々なエピソードを語っていた。
他紙ではどうかとネットで探してみた。あったのだが、多くがデジタル版の購読につなげる仕組みになっており、全文読めるものは少なかった。
3紙読んだ。
東京新聞では仲代の苛烈な戦争体験を書き、終始反戦を貫いたことに触れていた。
毎日新聞では社説に「観客を魅了した無二の存在」とのタイトルで、仲代が「二足のわらじ」に拘ったことを書いていた。二足とは、一年の前半は映画、後半は舞台ということで、「舞台でしっかり演じられれば、映像の世界でも通用する」と言う考えが根底にあったそうだ。その考えに基づいて「無名塾」で後進の育成に尽くした。そして、「最後の戦争体験者」として「エンターテインメントが結果として戦争反対というメッセージになればいい」という信念を貫いたことも紹介していた。
驚いたことはアメリカの新聞が仲代の追悼記事を書いたことだ。
ワシントン・ポストだ。
「批評家たちはその卓越した演技の幅を称賛し、よくマーロン・ブランドやローレンス・オリヴィエになぞらえて、彼の役への完全な没入ぶりを高く評価した」と。
さ、せっかくの溜め録、少しずつ観ていくぞー!
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