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技と言葉

2022年7月22日 (金)

武術の技・形が言葉で表されている。その通りにやってみると、それらしく、又実に効き目があるのだ。面白い!

ショッピングセンターで日中国交正常化50周年を祝う催しがあり、小中高生が中国武術の演武を披露した。

太極拳の演武
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撮影はフリーでしたが念のため黒メガネをかけました。

太極拳については多和田葉子さんの新聞小説「白鶴亮翅」(朝日新聞朝刊連載)を読む中で関心を持った。

ちょっと横道にそれるけど、今も日々連載「白鶴亮翅」を読み進めているのだが「新聞小説」の持つイメージが微妙に変化してきたかな。

小説というと純文学だ、大衆小説だ、といった区分けから始まり、恋愛小説、推理小説、時代小説、空想科学小説といった諸ジャンルもあり、日本独特と言われる「私小説」等も出てくる。     

多和田さんの小説は「私小説」ぽいのだが単純には括れないな。

ネット上の論評をちょっと見ていたら上手いこと言っている一文があった。

かいつまんで要約すると、大正、昭和の始めにかけて日本の作家連に自然主義の影響が及び作家達はいかに「自然の事実を観察し、真実を描く」かに腐心した。その結果彼らは「虚構虚飾を否定し、私の事実を書く」ことに没入した。それが私小説と言われるものに昇華した。ところが評論家の小林秀雄さんは次のような意味合いで日本の私小説を評価しなかった。二十世紀の始め「西洋の『私』は社会化されていたが、日本の『私』は社会化されていなかった」と。 なるほどなるほど。分かった気になった。

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自然主義文学者 島崎藤村

その点で多和田さんの小説は「井戸端会議」的であり「私小説」的であるものの、ちょっと違っていたのだ。「私」が社会化(?)されているのだ。確かに日々の出来事を追いながらもスケールが大きい。ウクライナ侵略にも繋がるヨーロッパの歴史的事実やスラブも含めた民族問題も登場し重層的展開をしつつ話が進んでいる。新聞小説として面白いかも・・・・横道でした。

そんな中でも一貫しているのが太極拳にまつわることだ。

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とは言うものの、太極拳について多くの行数を使い語られるのは連載60話に至ってだ。65話で太極拳気功学校の初心者体験入学のために出かけ、66話で若い中国人女性の先生による初心者指導が始まった。

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ここで、タイトルに書いたように先生の技指導で使う言葉に感心したのだ。

先ずは基本形。

「脚を肩の幅に開いて、足の裏をしっかり床につけて立ってください」

「爪先や踵に片寄らないように、足の裏全体に平均的に体重をかけてください。それからゆっくりと膝を曲げて腰を少し落として」

「背中はそりかえらせず、まるめずに。肩の力を抜いて」

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私が感心したことを作中で主人公が(と言うか多和田さんが)上手く表現している。

「先生が『肩』と言えば肩に意識が宿り、『背中』と言えば背中に意識が移る。意識を向ける場所を頭で操作出きるのは当たり前のことなのに普段してないことなので軽い驚きがあった」。そうなんだよね。

正規の指導が始まった75話では立ち方について語られる。

「つむじから一本の糸で吊り下げられているような気持ちで立って見てください」と先生が指導すると、主人公は「糸で上から吊り下げられているので、倒れる心配はない。私はかなり動いても倒れないことを痛快に感じ、大胆になっていた」と反応した。

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極め付きの表現が第115話に出てきた。この時点では はやニ四式太極拳の指導が始まっている。

太極拳では人間の生命エネルギーを「気」と捉え、気が通る道を「経絡」と呼ぶ。この経絡を二十四の動きで刺激して気の流れをよくし、全身に気を巡らせるのがニ四式太極拳なのだ。

先ずはスタート。形と動きは伸ばした腕を前に持ち上げて、また下ろすというものだけど、先生の表現は分かりやすく、自らやってみるとまさに「なるほど」というものだった。

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「地面の底に含まれている力を吸い上げるように掌(てのひら)を上に向けてゆっくり腕を上げていってください。腕が地面と水平になったら、今度は掌を下に向けて、大きなボールに肘をのせるように腕の重さを任せながら、ゆっくり下していってください。最初に下りていくのは肘です」

「お尻は突き出さないでください。背中を真っすぐにして、上半身の体重を均等に骨盤にのせてください。前屈(まえかがみ)になってはいけません。後ろにふんぞり返ってもいけません」

なるほどなるほど!

これなら私だって物にすることができそうじゃんと思った。しかし、それも束の間だった。

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二週間前に開催された「全日本武術太極拳選手権大会」で優勝争いをした選手たちの演武が放映された。(NHK BS 1  7/18)

これを見て武術を侮ってはいけないとしみじみ感じた。

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南拳優勝者の演武

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言葉だけでなんとかなるのは入り口だけだった。

日々の鍛練による筋力、柔軟性、敏捷性、平衡感覚等々を養うことを前提としながら、途中でめげない性根がなきゃね。

反省!

多和田さんの連載はこの金曜日で167話を迎えた。バスタブの中に現れる幽霊の話が進行中。